物流コストを圧迫する会計監査の慣行

物流拠点には、所有権の異なる在庫が保管してある場合が多く見受けられる。所有権
が異なると、一般的に会計監査時の指定により、物理的に保管場所を区分しなければな
らない。しかし、そのような指示の法的根拠は特になく、この会計監査の慣行により、
物流拠点内において様々な問題が発生しており、物流コストを増加させる要因の一つと
なっている。この慣行を排除し、情報システムの活用により、情報上、所有権ごとの在
庫を管理することで、実際に行われている作業の無駄の排除や、所有権ごとの保管場所
の共有化をもって、物流コスト削減を図りたい。

一般的に、物流拠点には、同一社内でも工場部門在庫や販売部門在庫といった、原価計
算における所有権の異なる在庫が保管されているのが現状である。物流拠点では、所有権
が異なると保管区分を明確にしなければならないという社内規定や、会計監査からの指示
に従って、実際に区分した運用を行っている。しかし、所有権に応じて区分し、保管しな
ければならないという法的根拠は、事実、存在しない。
そこで、今回、この会計監査の慣行により、物流拠点内の運用においてさまざまな
弊害が発生し、物流コストが増加しているという実態に焦点を当て、保管区分の実態把握
や、コスト増加要因、そして情報システムを活用した今後の対応、方向性を論じてみたい。

・所有権による保管区分の背景
物流拠点において、保管している在庫の所有権は、荷主企業だけではなく、同一グルー
プ内企業、例えば、工場部門の在庫や営業(販売)部門の在庫、またはメーカー在庫と販
売会社の在庫といったように、多岐にわたっているのが現状である。一般的に、所有権が
異なると、社内規定や決算期における会計監査の方針により、その在庫は保管場所を区分
しなければならない。所有権により区分するということは、実際に作業が伴うことで、そ
の作業は、拠点内の横移動であり、価値を生まないものでもある。保管区分ごとに作業を
行い、保管区分ごとに保管場所を確保しなければならないということになる。
ただし、所有権の違いによる保管場所の区分を規定している法的根拠は、存在しないの
が実状である。それにもかかわらず、社内規定や会計監査からの指示により、保管場所を
区分しているのが実態となる。
なぜ所有権が異なると保管区分を明確に行わなければならないのか、その背景を考えて
みたい。企業の成長に伴い組織が肥大化していくと、組織管理が煩雑になる傾向が高い。
そこで、意思決定を速めて経営のスピード化に対応するため、事業部制、分社化、カンパ
ニー制と、企業の組織が変遷した。各事業部門に権限が与えられ、独立採算制となったこ
とから、事業部ごとに損益計算書、貸借対照表を作成する必要があったのである。このた
め、倉庫内で事業部門が複数存在する場合、その事業部門ごとに製品、商品を保管するこ
とにつながった可能性が高い。
また、その事業部内でもいくつかの保管形態があり、保管の区分を混雑させる原因の一
つとなっている。

同一拠点内において、所有権が異なる場合、保管を区分しなければならない理由は、次
の点が考えられる。まず、部門別物流コスト算出が容易であるということ、次に、会計監
査人による指示で実施していること、そして、所有権ごとに保管するということは、実地
棚卸が容易になることが考えられる。
まず、コスト算出が容易という点では、各事業部門が物流に関しても、他事業部門とまた
がらずに独立して管理を行っていることが、一般的な企業に見受けられることを指摘でき
る。管理という観点から考えると、同一拠点内でも保管場所を区分して保管することは、

責任範疇も自ずと区分されることになる。区分するということは、作業自体や、配送料金
に関しても、他の事業部門と区分されることから、物流費の算出が容易になることが考え
られる。
次に、会計監査による指示であるが、例えば、会計監査をつかさどる監査法人の指示を
考えることができる1)。しかし、同一拠点内において所有権が違っても、別途保管場所を
区分しなければならないという法的根拠は存在しない。監査法人から指示があるというこ
とは、決算期の会計監査時の実地棚卸の確認が容易になることだけである。すなわち、実
地棚卸の確認時に、他事業部門の製品が混在して保管してあると、どの製品が実地棚卸を
行う対象なのかをすぐに確認できないためであると思われる2)。
ただし、明確に区分しなければならないという指示が仮にあったとしても、区分しない
ほうが何らかのコストメリットがあることを説明できれば、その指示に従う必要がなくな
ることになる。すなわち、監査人には同一拠点内において、異なる所有権による区分の実
施権限を持つことはできない3)。
最後に、実地棚卸が容易という点である。所有権ごとに区分して保管していると、上記
の実地棚卸の確認が容易であるということと共に、改善を見つけやすいということが考え
られる4)。棚卸とは、自社の棚卸資産を把握するために行うものであり、実地棚卸を行う
ことで、所有権ごとに、製品の保管状況や製品自体の劣化、破損を見つけ出し、棚卸資産
の計上に大きな影響を与えるものを改善する点にある。また、所有権ごとの在庫が、どの
くらいの保管場所を確保しているのかという点も看過することはできない。

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